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2025.10.31

色選びに正解はないけど、間違いは必ずある

色選びに正解はないけど、間違いは必ずある

「色を決めるのが、いちばん時間がかかる」
デザインをしていると、そんな瞬間が何度もあります。
でも実はその迷いこそが、いちばん面白い時間かもしれません。

色には、ある程度“決まった印象”があります。
青はクールで落ち着いた印象。
赤は情熱やエネルギーを感じさせる色。
黄色は明るく、親しみやすい。
こうした共通のイメージが、私たちの感情に自然と影響を与えています。

だからこそ、「どれが正解か」ではなく、「どれが不正解か」が重要になることがあります。
色の使い方を間違えると、伝えたい意図とはまったく違う印象を与えてしまうこともあります。
それが、色選びのいちばん難しくて、いちばん面白いところです。

色には“正解”よりも“間違い”が存在する

なぜ正解がなくても、間違いはあるのでしょうか。

たとえば、エラーメッセージを青で表示したとします。


エラーなのにエラーに見えない。

多くの人は、それを「成功」や「完了」のサインだと受け取ってしまい、エラーであることに気づかないかもしれません。

ブランドを高級に見せたいのに、蛍光色をメインに据えたらどうでしょう。
病院の案内板に赤を多用していたらどうでしょう。
子ども向けのアプリなのに、画面全体が暗い色調だったらどうでしょう。

いずれも、意図とは違う印象を与えてしまうはずです。

文字色と背景色のコントラストが不足している場合も同じです。
文字は存在していても「見えない」ものになってしまい、情報として機能しません。

色は、ただ見た目を整えるためのものではありません。
見る人に、意味や意図を伝える役割があります。

だからこそ、選び方を間違えると、
本来伝えたかった情報が届かなくなってしまう。
ときには、まったく逆の意味に受け取られてしまうことすらあります。

「間違った色」は、確かに存在するのです。

色を選ぶとは、間違いを避けること

色選びは、一見「正解探し」に思われます。
しかし実際は、その逆に近いのではないでしょうか。

実はこのプロセス、私たちは日常のなかで、無意識に繰り返しています。

たとえば——
朝の服選び。
気分や天気、TPOや人の目を考えながら、シャツとパンツ、靴やバッグの色の組み合わせを何通りか試しては、「これはちょっと違うかも」と感じるものを、無意識に外していく。

そうして最後に残った組み合わせを、私たちは自然と「今日の服」として選んでいませんか?
実はそれとよく似ています。

好みの感覚にくわえ、意図を持って色を選ぶ。
その瞬間に、色は感覚から設計へと変わります。

色の意味は状況で変わる

朝の服選びのように、色の組み合わせを無意識に絞り込むプロセスは、デザインの現場でも起こっています。
UIの配色やブランドの色の選定でも、感覚だけに頼るのではなく、目的や文脈、ユーザーの受け取り方を考えながら、候補をひとつずつ除外していきます。

色の意味も、状況によって変わります。
青は信頼を表す一方、冷たさを帯びることもあります。
赤は祝いを象徴する一方、危険を知らせることもあります。
黄色は明るく元気な印象を与える一方、注意を促す色でもあります。

つまり、正解は一つではありません。
しかし、何が間違いかは、使う場面次第で決まります。
この事実を理解することで、感覚を設計へと変換し、色を意図的に活かすデザインが可能になります。

色選びの面白さ

色を決めるとき、私はまず候補を無意識に絞り込みます。
朝の服選びのように、感覚で「ちょっと違う」と感じるものを外し、最後に残った色に目を向けます。

そのうえで、好みの感覚にくわえ、意図を持って色を選びます。
色には正解はないけれど、間違いは確かに存在します。
どの間違いを避けるかを意識することで、感覚を設計に変え、色を意図的に活かすことができます。

色選びの面白さは、感覚と意図が行ったり来たりする瞬間にあるのではないかなと思っています。

この記事の著者

原 暢平

原 暢平 HARA Yohei

株式会社 もずくとおはぎ CCO

落ち着いた物腰と柔らかな佇まいの中に、青い炎のような熱を秘めている。

妥協を一切許さない彼のスタンスは、細部にまで理由を宿したデザインを紡ぎ出すため。
その設計へ一貫して注がれる美意識は、まさに職人技。

どこまでも貪欲に高みを目指し、進化していく自分を楽しみながらクリエイティブと向き合っている。

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