ECサイトのセキュリティ、どこまで気にすべき?企業が最低限押さえたいポイント
「大丈夫なはず」がいちばん危ないーまず現実を見よう
“気にしすぎ?”じゃない。後から払う代償がデカすぎる
「HTTPSにしたし、パスワードも強め。これで安心でしょ?」
……この“安心”が、ECセキュリティでいちばん危険です。
なぜかというと、セキュリティって「がんばった気分」では守れないから。
鍵を閉めた“つもり”で玄関が開いてたら、泥棒は努力を評価してくれません。淡々と入ります。
ECのセキュリティも同じで、必要なのは精神論ではなく、穴を見つけて優先順位どおりに塞ぐ設計です。
そしてEC構築(SaaSでもECパッケージでも)やリプレイスのタイミングは、その設計を入れる最大のチャンス。あとから継ぎ足しで直すと、だいたい「増築に次ぐ増築の迷宮」になり、最後に誰も地図を持っていない…というホラーになります。
2025年の攻撃は「突破」より「すり抜け」が上手い
増えているのは、ゼロから壁をぶち抜くタイプよりも、漏れたID・パスワードの使い回しを狙う不正ログインやアカウント乗っ取り。
ロイヤルティプログラムで会員価値が上がり、レコメンドで回遊が増え、API連携でデータがつながるほど、攻撃者にとっての“うまみ”も増えます。
便利な店は、狙われやすい。悔しいけど現実です。
ランサムウェアは「止める」だけでなく「晒す」で二段構え
ランサムウェアは「業務停止」で終わりません。「払わなければ公開する」で二重に脅すケースも増えています。
ネットスーパーのように日次運用が重いECほど、停止のダメージは直撃。だから“事故ゼロ”を祈るより、事故前提で損害を最小化する設計が必要になります。
シートベルトは「事故しないぞ」で締めるものじゃない。事故った時に命を守るために締める。セキュリティも、だいたい同じ性格です。ります。
最新のサイバー攻撃とリスクー狙われる場所はだいたい決まってる

いちばん揉めるのは「不正ログイン→なりすまし購入」
本人にとっては「勝手に買われた」。運営にとっては「対応コスト・返金・信用低下」の三重苦。
しかも炎上は、社内のチャットより先にSNSに届きます。世の中、通知の優先順位がだいぶ狂ってる。
次に痛いのは「運営側アカウントの乗っ取り」
管理画面に入られたら、改ざん・不正な値引き・データ吸い出しまで一直線。
ダイナミックプライシングや販促機能が強いほど、悪用された時の被害も大きい。「高機能」は、味方にも敵にもなるんです。
「脆弱性放置」は、鍵の壊れたドアを開けっ放し
脆弱性は“見つかった瞬間に危険”というより、“放置した瞬間に事故”です。
更新が止まったプラグイン、惰性で残った機能、棚卸しされない外部タグ。だいたいここから燃えます。火元って、派手じゃなく地味です。地味だから怖い。
最低限でいい。でも“最低限”は甘やかさないー対策の本丸

入口を固める:MFA/権限/不正ログイン対策
まずここ。ここを落とすと、他が強くても崩れます。
- 管理画面はMFA(多要素認証)が基本(“パスワード一本勝負”はもう無理ゲー)
- 権限は最小限(全員管理者=全員が事故ポイント)
- bot・総当たり前提でレート制限/CAPTCHA/ログイン通知までセット
「鍵は強いのに、合鍵を全員に配ってる」状態、わりとあります。怖いのは鍵じゃなく運用です。
仕組みを守る:HTTPS/WAF/アップデート
次にここ。EC構築の土台として持つべき三点セット。
- 常時HTTPS(SSL/TLS):通信の盗聴・改ざんを防ぐ「玄関の鍵」
- WAF:SQLインジェクションやXSSなどWebアプリ攻撃の防波堤
- アップデート運用:古いバージョン放置は「鍵の壊れたドアを開けっ放し」
WAFは“強そうな名前の壁”じゃなく、「よくある攻撃を門前払いしてくれる現場の守衛」です。守衛がいるだけで、犯人は別の店に行きます。犯罪者は努力を嫌います。
事故前提で備える:監視/バックアップ/初動
- ログは“見てる”より気づける状態へ(異常検知できる設計に)
- バックアップは“ある”より復旧できるが本体(復旧訓練まで)
- 連絡網、ログ保全、切り戻しなど初動手順を用意(損害が跳ね上がるか、抑えられるかはここで決まります)
「バックアップはあります(ドヤ)」→「復旧したことはありません(小声)」
この落差、危険です。火災訓練は「火事にならないため」じゃなく「火事になった時に命を落とさないため」にやる。セキュリティも同じく、実地が命です。
知っておいて損はない法律と業界基準ー落第すると燃える採点表
国内は「クレジットカード・セキュリティガイドライン6.0」を軸にする
2025年3月に、経済産業省が「クレジットカード・セキュリティガイドライン」の改訂を公表しています。ECサイトにおけるカード情報保護や不正利用対策の重要性がより明確になっており、現場としてはここを“基準線”に置くのがスムーズです。※1・2・3
ここを外すと、セキュリティ対策が「各自の見解バトル」になりがちです。
“基準線”があると、議論が「好み」から「要件」になります。大人の会話ができます。
PCI DSS v4.0.1:「新要件追加」ではなく“限定改訂(明確化)”
PCI DSS v4.0.1は、PCI SSCが説明している通り、限定的な改訂(明確化等)で、新規/削除要件を増減させる類のものではありません。※4
ただし、PCI DSS v4.xのfuture-dated(猶予付き)要件は、2025年3月31日から有効という整理が示されています。※5・6
つまり「v4.0.1になったからOK」ではなく、期日を見据えたギャップ整理が必要、という話です。
要するに、“卒業したつもり”が一番危ない。卒業式は、だいたいもう一回来ます。
外部サービスの選び方ーセキュリティは「機能」より「分担設計」
比べるべきは「守ってくれる範囲」と「自社が背負う運用」
ECはAPI連携で基幹・在庫・配送・決済がつながり、将来的にはAIエージェントで接客自動化、価格最適化(ダイナミックプライシング)まで視野に入る。便利になるほど、守る範囲も増える。
だから選定はこの3点を“言語化できるか”が勝負です。
- プラットフォームが担保する範囲(どこまで守ってくれる?)
- 自社が運用で担う範囲(誰が、何を、毎月やる?)
- 事故時の支援体制(窓口、対応スピード、復旧支援は?)
セキュリティは“武器のスペック比較”じゃなく、チーム戦の役割分担です。
誰が前線で、誰が後方で、誰が夜間当番か。ここが曖昧だと、何か起きた時に「それ、誰の担当?」で時間が溶けます。いちばん高いコストは、だいたいそこ。
makeshop byGMO/GMOクラウドECの“安心材料”をどう使うか
GMOメイクショップは、2025年9月1日付で「PCI DSS v4.0.1」準拠を公表し、対象として「makeshop byGMO」「GMOクラウドEC」を挙げています。※7
さらに、準拠に関する説明ページも公開しています。※8
ここで大事なのは「準拠してるから全部安心」ではなく、自社の分担を減らせる設計になっているか/運用が回るかを見極めること。
“強い土台”を選ぶ意味は、怖がるためじゃない。レコメンド改善やロイヤルティプログラム強化など、攻めの施策に集中するためです。
結局、何からやる?今日から動ける“最短ルート”
迷ったら順番はこれです。
- まず入口(MFA・権限・不正ログイン対策)
- 次に基盤(HTTPS・WAF・アップデート)
- そして事故前提(監視・復旧・初動手順)
ここまで整えると、複雑なAPI連携やネットスーパー級の運用、AIエージェント活用まで視野に入れても“攻めの余白”が生まれます。
「うち、どこが抜けてる?」となったら、現状(自社運用/外部サービス/決済周り)を棚卸しして、守る範囲の線引きから整理しましょう。
守れて回るECは、気合いじゃなく設計で作れます。──そして設計は、ちゃんと明るく作れます。怖い顔のまま進めると、現場が逃げますからね。
▼参照
[※1] 経済産業省|「クレジットカード・セキュリティガイドライン」が改訂されました(2025/03/05)
[※2] 一般社団法人 日本クレジット協会|クレジットカード・セキュリティガイドライン 6.0(PDF)
[※3] 一般社団法人 日本クレジット協会|セキュリティ関連資料一覧(ガイドライン等)
[※4] PCI Security Standards Council(PCI SSC)公式ブログ|Just Published: PCI DSS v4.0.1(2024/06/11)
[※6] PCI Security Standards Council(PCI SSC)公式サイト
[※7] GMOメイクショップ|プレスリリース:PCI DSS v4.0.1準拠(2025/09/01)
[※8] GMOメイクショップ|PCI DSS準拠について(説明ページ)
※関連リンク:「GMOクラウドEC」公式サイト



