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2026.09.03

優秀なEC担当者がいるほど、運営の問題は見えにくくなる|仕組みで回るECのつくり方

優秀なEC担当者がいるほど、運営の問題は見えにくくなる|仕組みで回るECのつくり方

優秀なEC担当者がいる会社ほど、運営上の問題に気づくのが遅れることがあります。

少しくらい情報が散らばっていても、必要なファイルを見つけてくれる。更新ルールが曖昧でも、過去の経緯から正解を判断してくれる。急なキャンペーンが決まっても、関係者に確認しながら公開日に間に合わせてくれる。

周囲から見れば、とても頼もしい存在です。
ただ、その人が毎回なんとかしている状態は、運営がうまく設計されている状態とは違います。

むしろ、仕組みの足りない部分を、担当者の記憶と責任感で埋めている可能性があります。
商品数が増え、販売チャネルが増え、施策の頻度が上がれば、その埋め合わせは難しくなります。ECを成長させる仕事より、ECを止めないための仕事が増えていくからです。

今回は、担当者の処理能力を上げる話ではありません。
担当者が無理をしなくても、一定の品質で回り続けるEC運営をどうつくるか。その考え方を整理します。

頑張れる人がいるから、運営の弱点が隠れる

属人的な運営は、最初から問題として現れるわけではありません。

商品数が少なく、関係者も限られている段階では、担当者が手作業で進めた方が早いこともあります。
商品説明をコピーする。画像を整える。管理画面へ登録する。担当者が内容を把握していれば、多少手間はかかっても業務は回ります。

問題は、事業が成長した後も、その方法が使われ続けることです。

10商品で成立していた手順を100商品でも続け、自社ECだけで済んでいた更新を複数モールでも繰り返す。キャンペーンのたびに、価格、バナー、商品説明、公開期間を人が確認する。
その結果、担当者はECを伸ばす人ではなく、ECを止めないための人になっていきます。
しかも、優秀な担当者ほど抜け漏れを先回りして防ぎ、曖昧なルールを経験で補います。現場は回りますが、業務の説明書は、その人の頭の中にしかありません。

これは頼れる体制というより、担当者本人がシステムの一部になっている状態です。

減らすべきは、作業量より「人が間をつなぐ箇所」

仕組み化というと、ツール導入や自動化が最初に思い浮かびます。

もちろん、システムは重要です。ただし、今ある作業をそのまま自動化しても、使いにくい運営が速くなるだけかもしれません。
先に見つけたいのは、人が情報やシステムの間をつないでいる箇所です。

たとえば、基幹システムの商品情報を確認し、表計算ソフトへ転記し、それを見ながらECへ登録する。画像を共有フォルダから探し、加工して、チャネルごとにアップロードする。
この場合、担当者は商品登録をしているだけではありません。システム同士の連携機能まで兼任しています。しかも、エラー通知機能も復旧機能も自分です。

仕組み化で減らすべきなのは、人の判断ではありません。

同じ情報の転記、定型的な加工、確認のための確認といった、人が中継地点になっている業務です。
企画、表現、判断は人に残す。一定のルールで処理できる仕事は仕組みに移す。

この線引きができていないままツールを増やすと、今度は「そのツールへ登録する作業」が増えます。仕組みを入れたのに、管理画面だけが増えた。ECでは、わりと普通に起きる話です。

「どこにあるか」より「どれが正しいか」で時間を失う

EC運営では、商品情報や画像を探す時間が見落とされがちです。

商品画像は共有サーバー、商品説明は表計算ソフト、価格は基幹システム、キャンペーン情報はチャット、承認履歴はメール。
情報が分散していると、担当者は作業を始める前に必要なものを集めなければなりません。さらに厄介なのは、見つけた情報が最新版とは限らないことです。
ファイル名に「最新版」「最新版2」「最終」「本当の最終」が並び始めたら、保存場所の問題ではなく、情報管理のルールが崩れています。

確認のメッセージを送り、返信を待ち、別の担当者にも聞く。更新作業そのものより、何を正として使うかを確定する方に時間がかかることもあります。
仕組みで回るECを考えるなら、商品情報や画像をどこに集約するかだけでは足りません。

誰が更新するのか。どのデータを正とするのか。変更されたことを誰が把握するのか。
情報の置き場所ではなく、情報が確定する流れまで決める必要があります。

API連携で減らしたいのは、入力より「確認のための確認」

API連携やデータ連携のメリットは、入力作業を減らすことだけではありません。

在庫数、価格、商品情報などを複数のシステムへ手作業で登録していると、担当者は更新後に、すべて正しく反映されたかを確認しなければなりません。
基幹システムの商品情報をECサイトやモールへ連携できれば、一度登録した情報を複数チャネルへ展開しやすくなります。更新漏れや表記の不一致を抑え、担当者が画面を行き来する回数も減らせます。
ただし、連携すればすべて自動的に整うわけではありません。
チャネルごとに商品項目、画像、カテゴリ、価格設定の仕様は異なります。データ変換や個別設定、場合によっては追加開発が必要です。
また、どの情報を、どのシステムから、どのタイミングで反映するのか。エラーが起きたときに誰が気づき、どう復旧するのかも決めなければなりません。

「自動で流れるようになったので、誰も見ていません」では、自動化ではなく放置です。

連携の価値は、確認をゼロにすることではありません。
人が一件ずつ画面を見比べる確認から、連携結果やエラーをまとめて管理する確認へ変えることにあります。

自動化すると、人の仕事は「実行」から「条件設計」へ移る

レコメンド、価格調整、メール配信、チャット接客など、EC運営で自動化できる領域は広がっています。

ただし、自動化は人の仕事を消すものではありません。
人が毎回実行しなくてもよい状態をつくり、その仕組みが正しく働いているかを管理するものです。
たとえば、レコメンド機能を導入すると、担当者が一商品ずつ関連商品を設定しなくても、閲覧履歴や購買履歴などをもとに商品を表示できます。
その一方で、在庫切れ商品を表示するのか、利益率の高い商品を優先するのか、お客様にとって不自然な組み合わせが出ていないかは確認が必要です。

担当者の役割は、商品を一件ずつ登録することから、条件を決め、結果を評価し、必要に応じて調整することへ移ります。

価格調整やチャット接客でも同じです。
どの条件で価格を変えるのか。変更できる上限と下限はどこか。AIによる案内をどこまで許容し、どの段階で有人対応へ切り替えるのか。
手を動かす時間を減らし、どこを直すべきか考える時間を増やす。

ここまでできて初めて、自動化はECの成長につながります。

何から仕組み化するか迷ったら、3つに分けてみる

すべての業務を一度に変える必要はありません。
まずは日々の作業を、次の3つに分けてみてください。

毎回、ほぼ同じ手順で行っている作業

商品情報の転記、画像のリサイズ、在庫情報の更新などです。
手順と判断基準が一定なら、自動化やテンプレート化を検討しやすい業務です。

他部署からの返答を待つ作業

価格確認、原稿承認、在庫確認、画像の差し替えなど、途中で業務が止まるものです。
システムだけでなく、依頼方法、締切、承認ルールを整理する必要があります。

特定の人にしか判断できない作業

「この商品はこの表現でよい」「この場合だけ価格を変える」といった、経験に依存する判断です。
すぐに自動化するのではなく、判断条件を言語化するところから始めます。

この3つを書き出すと、ツールで解決しやすい業務と、業務ルールから見直すべき箇所が分かれてきます。

EC基盤は、公開後の運営まで見て選ぶ

ECサイトの構築やリニューアルでは、画面上の機能やデザインに目が向きます。

もちろん、それらは重要です。

ただ、公開後に誰が商品を登録し、どのシステムと連携し、どの情報を正として運用するのかまで考えておかなければ、サイトが立派になった分だけ、裏側の作業が重くなることがあります。
EC基盤を選ぶときも、機能の数だけを見るのではなく、既存の基幹システムや在庫管理との連携が可能か、商品情報をどこまで一元管理できるか、運用変更にどれだけ対応できるかという視点が欠かせません。

私自身、ECプラットフォームに関わる立場として、機能の多さだけで基盤を選ぶことには慎重であるべきだと考えています。

大切なのは、多機能なシステムを導入することではありません。
自社の業務フローに合わせて、どこを連携し、どこを人の判断として残すのかを決められることです。

ECサイトの構築は、公開日を迎えるための作業ではありません。
公開後に、担当者がどのように運営し、改善を続けられるかまで含めて考える必要があります。

仕組み化は、担当者に時間を返すためにある

仕組み化の目的は、担当者を不要にすることではありません。
担当者にしかできない仕事へ、時間を戻すことです。

お客様の行動を分析する。商品の見せ方を考える。現場の声を拾う。新しい企画を試す。数字を見ながら改善の仮説を立てる。
ECを成長させるのは、転記の速さではなく、こうした判断と創造です。

日々の作業だけで一日が終わっているなら、それは担当者の能力不足とは限りません。運営の中に、人が無理をしなければつながらない箇所が多すぎるのかもしれません。
まず見るべきなのは、誰が頑張っているかではなく、どこで人が仕組みの代わりをしているかです。

頑張る人を増やす前に、頑張らなければ回らない構造を減らす。

EC担当者の力は、運営を壊さないためではなく、ECを次へ進めるために使われるべきです。

※関連リンク:「GMOクラウドEC」公式サイト

この記事の著者

浦川 航平

浦川 航平 URAKAWA Kohei

株式会社 もずくとおはぎ 代表取締役 CEO

長崎県佐世保市出身。 経営者と芸術家。ふたつの顔を持つ男。

家具・プロダクトデザイナーから通販会社のダイレクトマーケッターを経て2012年にウェブ業界へ足を踏み入れ、2023年3月に独立。経営者の道へ。

「右脳」と「左脳」を自由に行き来する独自のスタイルで、戦略的なプロデュースと緻密なマネジメント、そして人の懐にスッと入る柔軟な人柄を武器に、数々のクライアントの本質的課題に切り込み、解決へと導いてきた。

2025年6月、「GMOクラウドEC」エバンジェリストに就任。
GMOメイクショップ株式会社との連携を通じて、EC領域のさらなる可能性を追求している。

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