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2025.09.26

“使いやすさ”って、誰の基準?

“使いやすさ”って、誰の基準?

「これなら迷わないだろう」
「わかりやすく整理したつもり」
——その“つもり”が、誰かの迷いを生むことがあります。

“使いやすさ”とは、いったい何なのか。
そして、それは誰のための基準なのかを、考えていきたいです。

“ユーザー目線”とは?

「ユーザー目線」という言葉を、知らず知らずのうちに使っていませんか?
でも、あらためて考えると、ユーザーってだれなのでしょう。

たとえば——
・“直感的”と言いながら、それが「自分にとってわかりやすいだけ」になっていないか
・関係者間で共有されている背景やルールを、ユーザーも知っている前提で設計していないか
・「説明しなくても伝わる」と思ったものが、本当にそうなっているか

「ユーザー目線」と言いながら、結局は“自分だったら”を前提にしてしまっていることはないでしょうか。
でも、それは本当のユーザーとは違うかもしれません。

ユーザーの目線は、意外とズレて見えていることもあります。
だから毎回、ちょっとだけ立ち止まってみるようにしています。

「親切」より、「邪魔にならない」設計

“わかりやすさ”が、必ずしも“親切”になるとは限りません。

たとえば、操作のたびに表示されるガイドや、すべての機能をずらりと並べたメニュー。
どちらも意図は親切でも、かえって迷いやストレスにつながる場合があります。
大事なのは、使う人が迷わず判断できるように、情報の配置や見せ方を工夫できているかどうかです。

UIを考えるときには、“伝えたいこと”が、“伝わりやすい状態”になっているかを丁寧に見直すことを心がけています。

情報設計は、「正しさ」じゃない

UI/UX設計は、唯一の正解を導く仕事ではありません。
むしろ、“迷わせない”や“引っかかりのなさ”をどうつくるかが大切です。

だからといって、ただ情報を削ればいいわけでもなく、
・伝えるべきことを見極めて、何を足すか・引くかを判断する
・ユーザーが“知らなくていいこと”まで含めて、構造を整える
・言葉に頼りすぎず、流れや配置で意図を伝える

必要なのは、「正しさ」より「適切さ」。
ときには、意図を伝えることより、意図に気づかせないほうがスムーズなこともあります。

具体例を挙げると、以前リニューアルをさせていただいた、KAICOさんのサイトでは、
ファーストビューに、矢印や「スクロールしてください」のようなガイドは入れていません。
それでも多くの人は迷うことなく、自然に読み進めていくと思います。

視線の流れや余白設計など、細かな工夫によってスクロールしたくなる構造を意識したUIで、
「行動を促す」ことよりも「迷わせない」を選んだUIと言えるかもしれません。

UIを考えるとき、作り手の意図をそのまま届けるよりも、
ユーザーの“なんとなくの行動”に寄り添う方がうまくいくことがあります。
意図を説明するよりも、気づかれずに伝わる方が心地よいです。
そんな視点で見直すことは、設計に欠かせないと考えています。

立ち返るべき視点とは?

「これならきっと伝わる」——そう思いながら設計したものが、まったく伝わらなかった経験はありませんか?
そんなときに立ち返りたいのは、「本当にこれは使いやすいのか?」というユーザーの視点。
・どこで止まったのか
・どこで戸惑ったのか
・なぜそこで戻ったのか

使い手の行動には、設計者の見落とした違和感が表れています。
それに気づけるかどうかで、UI/UXの質は大きく変わっていきます。

「わかりやすさ」や「親切さ」は、押しつけるものではありません。
気づかせること、迷わせないこと。

UI/UXに正解はなくても、頼りにすべき軸はあって、
それはいつだって、使う人の側にあります。

サイト制作に関するお悩みなどございましたら、お気軽にご相談ください!

この記事の著者

原 暢平

原 暢平 HARA Yohei

株式会社 もずくとおはぎ CCO

落ち着いた物腰と柔らかな佇まいの中に、青い炎のような熱を秘めている。

妥協を一切許さない彼のスタンスは、細部にまで理由を宿したデザインを紡ぎ出すため。
その設計へ一貫して注がれる美意識は、まさに職人技。

どこまでも貪欲に高みを目指し、進化していく自分を楽しみながらクリエイティブと向き合っている。

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