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2026.03.13

「引き算」という考え方

「引き算」という考え方

ロゴをデザインするとき、とにかくシンプルにすることを心がけます。
一般的に、下記の5つの条件を満たしていることが、いいロゴといわれます。

単純:誰でも数秒で描き写せるようなもの。
記憶:一目で心に引っかかる「何か」がある。
不変:何年経っても古臭くならない。
万能:1cmのサイズでも、白黒でも認識できる。
適切:ブランドの格やターゲットに合っている。

この中でも、「単純」に重きを置きます。
「単純」だから、覚えられる。
「単純」だから、どこでも使える。
「単純」だから、古くならない。

このように、連鎖的に条件をクリアするとまではいきませんが、
例えば、一本の線や、ひとつの点だけでブランドを表現できたら、最高だなと思ったりします。

とはいえ、いろんな想いやストーリーを乗せるので、なかなかそうはいきません。
だからこそ、「引き算」が必要になってきます。

なぜ「引き算」が必要なのか?

「単純」:視線のスピードに応えるため

スマホをスクロールする指の速さや、街角で視界をかすめる一瞬の中に
ロゴは目に入ってくることが多いと思います。
その速度の中では、複雑な説明は届きません。
要素を削ぎ落とし、形の純度を高めることで、ロゴはより速く、確実に認識されるようになります。

「記憶」:説明を手放し、象徴として残すため

あれもこれもと盛り込んだロゴは、情報としては増えても、形としては記憶に残りにくくなります。
引き算とは、説明を足すことをやめ、意味をひとつの形に集約していく作業です。
語りすぎないことで、ロゴは「理解されるもの」から「記憶に残るもの」へと変わっていきます。

「不変」:時間の影響を受けにくくするため

10年、20年と時を経ても古さを感じさせないロゴは、
時代を反映した表現ではなく、それ自体が自立した形になっています。
引き算を重ねることで、ロゴは時間の影響を受けない普遍性を手に入れます。

「万能」:環境が変わっても成立させるため

ロゴは、1cmのアイコンにもなり、巨大なサインにも使われる想定で考えます。
環境が変わるほど、視認性や存在感などに影響してきます。
余計な要素を削ぎ落とた構造は、どんなサイズ、どんな媒体においても、その存在感を失いません。

「適切」:迷いを断ち、核だけを示すため

その形がブランドの核を外していないかどうかです。
材料を広げ、文脈を整理し、最後に残った「これしかない」要素を選び取る。
それこそが、ブランドの格にふさわしい「適切さ」をつくります。

「これ以上、引けない」という地点

こうして「引き算」の果てに生まれたロゴは、もはや単なる図形ではありません。

どんなに小さな画面でも、どんなに速いスクロールの中でも、そのブランドが「そこにある」ことを一瞬で証明する。
それは、「単純」で「万能」な形だからこそ手にできる、ブランドにとって最強の武器になります。

「これ以上、何も引けない」という地点まで思考を研ぎ澄ますこと。
引き算を重ねたロゴは、余計な要素に頼らないため、結果として長く使え、覚えられる形になり、多くを語らず、ブランドの核だけを伝える。

それが、私がロゴをデザインするうえで、何よりも大切にしている「引き算」の考え方です。

この記事の著者

原 暢平

原 暢平 HARA Yohei

株式会社 もずくとおはぎ CCO

落ち着いた物腰と柔らかな佇まいの中に、青い炎のような熱を秘めている。

妥協を一切許さない彼のスタンスは、細部にまで理由を宿したデザインを紡ぎ出すため。
その設計へ一貫して注がれる美意識は、まさに職人技。

どこまでも貪欲に高みを目指し、進化していく自分を楽しみながらクリエイティブと向き合っている。

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