「引き算」という考え方
ロゴをデザインするとき、とにかくシンプルにすることを心がけます。
一般的に、下記の5つの条件を満たしていることが、いいロゴといわれます。
単純:誰でも数秒で描き写せるようなもの。
記憶:一目で心に引っかかる「何か」がある。
不変:何年経っても古臭くならない。
万能:1cmのサイズでも、白黒でも認識できる。
適切:ブランドの格やターゲットに合っている。
この中でも、「単純」に重きを置きます。
「単純」だから、覚えられる。
「単純」だから、どこでも使える。
「単純」だから、古くならない。
このように、連鎖的に条件をクリアするとまではいきませんが、
例えば、一本の線や、ひとつの点だけでブランドを表現できたら、最高だなと思ったりします。
とはいえ、いろんな想いやストーリーを乗せるので、なかなかそうはいきません。
だからこそ、「引き算」が必要になってきます。
なぜ「引き算」が必要なのか?
「単純」:視線のスピードに応えるため
スマホをスクロールする指の速さや、街角で視界をかすめる一瞬の中に
ロゴは目に入ってくることが多いと思います。
その速度の中では、複雑な説明は届きません。
要素を削ぎ落とし、形の純度を高めることで、ロゴはより速く、確実に認識されるようになります。
「記憶」:説明を手放し、象徴として残すため
あれもこれもと盛り込んだロゴは、情報としては増えても、形としては記憶に残りにくくなります。
引き算とは、説明を足すことをやめ、意味をひとつの形に集約していく作業です。
語りすぎないことで、ロゴは「理解されるもの」から「記憶に残るもの」へと変わっていきます。
「不変」:時間の影響を受けにくくするため
10年、20年と時を経ても古さを感じさせないロゴは、
時代を反映した表現ではなく、それ自体が自立した形になっています。
引き算を重ねることで、ロゴは時間の影響を受けない普遍性を手に入れます。
「万能」:環境が変わっても成立させるため
ロゴは、1cmのアイコンにもなり、巨大なサインにも使われる想定で考えます。
環境が変わるほど、視認性や存在感などに影響してきます。
余計な要素を削ぎ落とた構造は、どんなサイズ、どんな媒体においても、その存在感を失いません。
「適切」:迷いを断ち、核だけを示すため
その形がブランドの核を外していないかどうかです。
材料を広げ、文脈を整理し、最後に残った「これしかない」要素を選び取る。
それこそが、ブランドの格にふさわしい「適切さ」をつくります。
「これ以上、引けない」という地点
こうして「引き算」の果てに生まれたロゴは、もはや単なる図形ではありません。
どんなに小さな画面でも、どんなに速いスクロールの中でも、そのブランドが「そこにある」ことを一瞬で証明する。
それは、「単純」で「万能」な形だからこそ手にできる、ブランドにとって最強の武器になります。
「これ以上、何も引けない」という地点まで思考を研ぎ澄ますこと。
引き算を重ねたロゴは、余計な要素に頼らないため、結果として長く使え、覚えられる形になり、多くを語らず、ブランドの核だけを伝える。
それが、私がロゴをデザインするうえで、何よりも大切にしている「引き算」の考え方です。



