ひとつの形の、その手前。
ロゴって、完成したものだけを見ると、すごくシンプルに見えることがあります。
丸だったり、線だったり、単純な図形の組み合わせだったり。
でも、その形に一発でたどり着いたかというと、もちろんそんなことはありません。
自分の場合、最終的にはシンプルな一つの形になっていても、その裏ではかなりの数のラフを描いています。
おそらく、多くのデザイナーが何百ものスケッチを繰り返しながら、ひとつの造形にたどり着いているんじゃないかと思います。
今回は、その一つの形にたどり着くまでに何をしているのか。改めて振り返ってみます。
まずは、言葉から。
ロゴを考えるとき、私の場合、まず言葉の意味や、その由来から入ります。
ブランドやサービスについて考えながら、思いつく言葉を、とにかく書き出していく。
そして、ある程度出てきたら、今度はその言葉同士の共通点を探していきます。
「何を基準に共通点を見つけているのか?」
と聞かれると、ここはちょっと難しい。
意味なのか、印象なのか、それとも別の何かなのか。
案件によっても違うので、自分でも一言では説明できません。
ただ、いろいろな言葉を並べて見ていると、
「この辺に何かありそうだな」
というものが出てきます。
もちろん、一つの方向にまとまるわけではなく、全然違う方向性が出てくることもあります。
そこから、今度は手を動かしていきます。
ここから、何百回。
ラフを描き始めても、一つの形を決めて、それを完成させていくわけではありません。
描いて、また描いて。
同じような形を何度も描くこともあれば、少し変えてみたり、まったく別の方向を試してみたり。
そうやって、かなりの数を描いていきます。
正確に数えたことはありませんが、感覚的には何百というくらい。
最終的に世に出るのは、一つのシンプルな形です。
完成したロゴだけを見ると、それまでに描いたものは見えません。
一発ですごい形を思いついたわけではなくて、何百と描いたものの先に、その一つがあります。
消すというより、残す。
では、その中からどうやって一つにしていくのか。
改めて考えてみると、自分の場合は、ダメなものを順番に消していくというより、気になるものを残していく感覚の方が近いです。
最初のきっかけは、かなり感覚的です。
たくさん並んでいる中で、なぜか目が止まる。
「なんか、これ気になるな」と。
ただ、もちろん「なんかいい」で、そのまま残しているわけではありません。
なぜ目が止まったのか。
この形のどこに惹かれたのか。
最初に考えていた言葉や意味と、どうつながっているのか。
感覚的に引っかかったものに対して、自分なりに理由を探して、言葉にしていきます。
そこでちゃんと根拠が見つかるものもあれば、考えていくうちに「やっぱり違うな」となるものもある。
たぶん自分にとっての「なんか気になる」は、答えというより、考え始めるためのきっかけなんだと思います。
最初からすべてを理屈で選んでいるわけでもないし、感覚だけで決めているわけでもない。
感覚で引っかかって、そこから理由を探していく。
そうやって、残す形を少しずつ絞っていきます。
一度、時間を置いて、また見る。
気になるものが出てきても、その場ですぐに「これでいこう」と決めるわけではありません。
一度、時間を置いて、また見る。
それでも、やっぱり目が止まるのか。
気になる案がいくつか残っていても、一つずつ点数をつけて優劣を決めるというより、何度も見ているうちに、その中の一つが際立って見えてくることがあります。
そこから、さらに形を詰めていきます。
一方で、残らなかったラフは、基本的にはもう見返しません。
「もったいないから、別の案件で使おう」
ということもないです。
そのロゴを考えるために描いたものなので、そこで役目は終わり。
何百枚描いたとしても、最後に表に出るのは一つだけです。
シンプルな形の、その裏側。
こうして改めて振り返ってみると、ロゴをシンプルにするために、最初からシンプルに考えているわけではないんだなと思います。
むしろ、逆なのかもしれません。
言葉をたくさん出して、ラフもたくさん描く。
気になったものを残して、また描く。
時間を置いて、もう一度見る。
その繰り返しの先に、最後の一つが残ります。
完成したロゴだけを見れば、そこまでの過程は全部なくなって、シンプルな形だけが残る。
でも、その一つの形の裏側には、表には出なかった何百もの形があります。
シンプルだから、簡単だったわけではない。
たくさん考えて、たくさん描いて、いろいろな可能性を試した結果として、最後にシンプルな一つが残った。
ロゴをつくるとき、自分はそんなふうに、一つの形を探しているんだと思います。



