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2026.09.24

グループ会社ごとにバラバラなEC、いつまで続けますか?全社共通基盤という選択

グループ会社ごとにバラバラなEC、いつまで続けますか?全社共通基盤という選択

グループ会社や複数ブランドを抱える企業のECについて話を聞いていると、ときどき不思議なことが起こります。

A社はこのECパッケージ。
B事業部は別のASP。
Cブランドは数年前にスクラッチで構築。
最近立ち上げたDブランドは、また別の仕組み。

そして誰かが尋ねます。
「ところで、うちのECって全部で何サイトあるんでしたっけ?」
笑い話のようですが、珍しい話ではありません。

それぞれ立ち上げた時点では、おそらくどれも間違った判断ではなかったはずです。その事業、そのブランド、そのタイミングに必要なものを選んだ。その結果、個別最適が積み上がっただけです。
問題は、それが増え続けたときです。
ECが5サイト、10サイトと増えてくると、システム構成そのものが経営課題になってきます。

そこで考えたいのが、グループ・事業部横断でECの裏側を共通化する「全社共通基盤」という選択です。

バラバラなECは、誰かが間違えた結果ではない

ECがバラバラになること自体は、それほど不自然ではありません。

グループ会社ごとに予算が違う。担当部署も違う。必要な機能も違う。立ち上げる時期も違う。
それぞれが、その時点で最適なベンダーやECシステムを選ぶのは当然です。
問題は、その状態を何年も更新しないことです。

5つのECサイトが別々の基盤で動いていれば、保守契約も、ライセンスも、システム連携も、運用ノウハウも5通りになります。

担当者が異動するたびに「このサイトは誰に聞けばいいんだっけ?」から始まる。
新しい施策をやろうとしても、AサイトではできるけれどBサイトではできない。
データを集めれば、項目や形式が微妙に違う。
ECサイトは増えたのに、組織としてのEC運営能力は増えていない。
ECが増えるたびに、新しい仕組みを足していく。
それを成長と呼ぶには、少し無理があります。

もちろん、共通化すれば必ずコストが下がるわけではありません。移行費用や連携開発が必要になる場合もあります。
だから、これは単純な「システム費削減プロジェクト」ではありません。

本当に痛いのは、データがつながらないこと

私は、コスト以上に大きな問題があると思っています。

顧客データの分断です。

同じお客様が、グループ内のブランドAとブランドBの両方を利用していても、
EC基盤が完全に分かれていれば、企業側では別々のお客様として存在していることがあります。
お客様から見れば「同じグループ」。
企業側から見れば「知らない人が二人いる」。
これでは、グループ全体で顧客理解を深めたり、ブランドをまたいだCRMやOne to Oneマーケティングを行ったりするのは難しくなります。
ECを単なる販売チャネルとして見るなら、それでも運用できます。
でも、ECを顧客接点やデータ取得の場として考えるなら、話は変わります。
サイト単位で売上を見ている限り、この問題は案外見えません。数字はそれぞれ出ているからです。
でも、「グループとして、このお客様をどこまで理解できていますか?」と聞かれた瞬間、急に答えにくくなる。

バラバラなECの厄介さは、壊れていないことです。
壊れていないから、変える理由が見つかりにくい。
そこが一番厄介です。

「統合する」と「全部同じにする」は別の話

ここでよく出てくるのが、
「共通基盤にしたら、ブランドごとの自由度がなくなるのでは?」
という懸念です。

でも、全社共通基盤は、すべてのECサイトを同じデザインにすることではありません。
ブランドごとのドメインやデザイン、コンテンツ、体験設計は残しながら、商品・受注・会員・在庫など、共通化できる領域を整理してバックエンド側をまとめる構成も可能です。

つまり、
お客様から見えるところは、それぞれ違っていい。
裏側で揃えた方がいいところは、揃える。
という考え方です。

共通化できる運用やシステムを裏側へ寄せれば、各ブランドはむしろ「自分たちにしかできない顧客体験」に時間を使いやすくなります。
全部違うことがブランドらしさではありません。注文データの持ち方まで個性的である必要は、たぶんありません。

ただし、何でも統合すればいいわけではない

ここでは逆の話もしておきます。

グループ会社だからといって、すべてを同じEC基盤に載せれば正解になるわけではありません。
顧客層も商流も物流も決済方法も大きく異なるなら、無理に共通化することで、かえって複雑になる場合もあります。
BtoCとBtoBでは必要な機能が違いますし、国内向けECと越境ECでも要件は変わります。

統合すること自体を目的にすると、
「せっかく共通基盤を作ったので、こっちの事業も載せましょう」
という話になりがちです。

順番が逆です。

大事なのは、全部をひとつにすることではなく、共通化した方が合理的な領域と、分けた方が合理的な領域を見極めることです。

統合は正義ではありません。
分断も悪ではありません。

理由のない分断が問題なだけです。

全社共通基盤で見るべきは「今の機能」だけではない

共通基盤を選ぶとき、機能一覧だけを比較するのは少し危険です。

今あるサイトを載せられるかだけでなく、今後ブランドが増えたときにどう拡張できるか。
基幹システムやWMS、POS、CRMなどとどう接続できるか。
OMOまで見据えるなら、オンラインと店舗のデータ連携も必要になります。

同時に重要なのがセキュリティです。
複数のECやデータがひとつの基盤に集まる以上、「何ができるか」だけでなく、「何か起きたときにどこまで影響するのか」まで考えなければいけません。
大企業になれば、EC部門だけで完結する話でもありません。情報システム、セキュリティ、法務、場合によっては経営企画まで関わります。
EC基盤選定というより、かなりIT基盤選定に近いプロジェクトです。

ここをEC担当だけで決めると、だいたい後半で誰かに止められます。
そして、その誰かはたいてい重要なことを言っています。

サッポロビールが進める、グループ横断のEC基盤

具体例として参考になるのが、サッポロビール株式会社様の取り組みです。

同社では複数のECサイトが存在していましたが、裏側のシステムがバラバラで、横断的に運用できないという課題がありました。
中期的な国内マーケティング戦略で「体験」を競争軸に掲げる中、代理店へ委託していたEC運営を、より社内で運営・管理する体制へ移行。ECを販売場所だけでなく、お客様と直接つながり、商品開発のテストマーケティングにも活用できる場として位置づけています。
そこで約10社を比較し、「GMOクラウドEC」を採用。
選定では、OMOを前提としたデータ連携の拡張性と、一部の障害が全体へ波及するリスクを踏まえたセキュリティが重視されました。
先行して、新しいお酒を体験できる「シュパーク」をリニューアルし、サッポロラガービール「赤星」の世界観を届ける「赤星商店」も開設しています。

さらに、外部システムとの連携によって受注の大部分を自動出荷できるようになるなど運用効率化が進み、他のグループ会社からも同じ基盤を利用したいという声が上がっているとされています。
将来的には、ECだけでなく実店舗、キャンペーン、飲食店なども含めて顧客IDやポイントをつなぎ、One to Oneマーケティングへ広げる構想も示されています。

2026年8月には「シュパーク」をリニューアルし、グループ会社であるサッポロライオンの商品も取り扱うようになりました。

ここで面白いのは、管理画面がひとつになることではありません。
共通基盤があることで、「グループで一緒に何かできそう」が増えていくことです。
システム統合が、事業連携の土台になり始めている。
全社共通基盤の価値は、そこまで見て考えた方がいいと思います。

全社共通基盤は「ECを減らす話」ではない

EC統合というと、「システムをまとめてコストを削減する話」に見えます。

もちろん、それも検討材料のひとつです。
でも、本質はそこだけではありません。

バラバラだった運用をつなぐ。
バラバラだったデータをつなぐ。
その先で、バラバラだった顧客接点をつないでいく。

つまり全社共通基盤は、ECサイトを整理するためのプロジェクトではなく、グループとしてお客様をどう見るかを整理するプロジェクトでもあります。
だから、いきなりシステム比較から始めるのはおすすめしません。

まず考えたいのは、
「どのサイトを統合するか」ではなく、
「グループとして、ECで何を実現したいのか」です。

商品や受注だけを共通化するのか。
会員IDまで統合するのか。
店舗やアプリまでつなぐのか。
ブランドごとに残すものは何か。
統合しない方がいい事業はどこなのか。

この整理が先です。

ここが曖昧なままでは、どれだけ高機能なEC基盤を選んでも、数年後にはまた個別最適が始まります。

そして誰かが言います。
「ところで、うちのECって全部で何サイトあるんでしたっけ?」
そこに戻らないための全社共通基盤です。

もし今、その質問に即答できないのであれば、新しいECを増やす前に、一度、今あるECを横に並べてみてください。
統合すべきもの。
残すべきもの。
つなぐべきデータ。
それが見えてから、基盤を選ぶ。

順番としては、そのくらいがちょうどいいと思います。

※事例参照
「GMOクラウドEC」の柔軟な拡張性と強固なセキュリティで、グループ横断のマルチサイトEC基盤を構築し、顧客体験を軸としたOMO推進とテストマーケティングの場を実現
サッポロビール「シュパーク」リニューアル(2026年8月4日)

※関連リンク:「GMOクラウドEC」公式サイト

この記事の著者

浦川 航平

浦川 航平 URAKAWA Kohei

株式会社 もずくとおはぎ 代表取締役 CEO

長崎県佐世保市出身。 経営者と芸術家。ふたつの顔を持つ男。

家具・プロダクトデザイナーから通販会社のダイレクトマーケッターを経て2012年にウェブ業界へ足を踏み入れ、2023年3月に独立。経営者の道へ。

「右脳」と「左脳」を自由に行き来する独自のスタイルで、戦略的なプロデュースと緻密なマネジメント、そして人の懐にスッと入る柔軟な人柄を武器に、数々のクライアントの本質的課題に切り込み、解決へと導いてきた。

2025年6月、「GMOクラウドEC」エバンジェリストに就任。
GMOメイクショップ株式会社との連携を通じて、EC領域のさらなる可能性を追求している。

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