ECの改善、どこから手をつける?“全部大事”では進まない理由
EC改善は、まず「役割」を見極めることから始まる
ECサイトの改善というと、多くの場合は売上を伸ばすための施策から考え始めます。
SEOを強化する。
広告を増やす。
商品ページを改善する。
LINEやCRMを活用する。
どれも間違いではありません。実際、多くの企業がこうした施策に取り組んでいます。
しかし、施策を増やしているのに思ったほど成果が出ない、という相談も少なくありません。
アクセスは増えている。
広告も回している。
商品ページも整えている。
それでも売上が伸びない。
このとき、「次は何を追加するか」という発想になりがちです。
ですが、本当に考えるべきなのは施策の数ではありません。
EC改善で重要なのは、今の課題に対して適切な順番で手を打てているかどうかです。
人が来ていないのにCVR改善ばかりしていないか。
購入率が低いのに集客だけ増やしていないか。
リピートが課題なのに新規獲得ばかり追いかけていないか。
課題と施策の順番が噛み合っていないと、どれだけ真面目に取り組んでも成果は出にくくなります。
だからこそ、ECサイトを見るときは最初の問いを変える必要があります。
「何をすれば売れるか?」ではなく、
「今、このECサイトはどの役割を果たすべきか?」です。
ECサイトは”販売”だけをしているわけではない
ECサイトというと、どうしても「商品を売る場所」と考えがちです。
もちろん、それは正しい。ECなので、売れないと困ります。
ただ、実際にサイトへ来るユーザー全員が、今すぐ購入するわけではありません。
ある人は、商品のスペックを確認している。
ある人は、他社商品と価格を比べている。
ある人は、導入できるかどうか社内で説明する材料を探している。
ある人は、購入前に少しだけ不安を解消したい。
そして一部の人だけが、「よし、買おう」と決めてカートに進む。
つまり、ECサイトには複数の役割があります。
- 情報収集を助ける
- 比較検討の材料を渡す
- 問い合わせや相談につなげる
- 購入の不安をなくす
- リピート購入しやすくする
- 顧客との関係を継続する
ここを無視して、購入ボタンだけを磨き続けても限界があります。
まだ迷っている人に「買ってください」とだけ言っても、相手からすると少し急です。初対面でいきなり契約書を出す営業みたいなものです。悪気はない。でも、距離感が惜しい。
売れるECサイトは、購入直前の人だけを相手にしていません。
比較している人、迷っている人、相談したい人、また買いたい人。
それぞれの状態に合わせて、必要な情報や導線を用意しています。
ECサイトを”売る場所”から、
顧客と出会い、判断を助け、関係を育てる場所として捉え直す。
ここが、改善の出発点です。
「全部やる」は、だいたい全部ぼやける

EC改善の相談でよくあるのが、やりたいことが増えすぎている状態です。
SEOもやりたい。
広告も改善したい。
SNSも強化したい。
CRMもやりたい。
商品ページも直したい。
在庫連携もしたい。
MAも気になる。
ついでにLPも作りたい。
気持ちは分かります。
ただ、ここで全部に手を出すと、だいたい全部が浅くなります。
施策が増えるほど、見るべき数字も増えます。関わる人も増えます。判断も遅くなります。
その結果、「いろいろやっているのに、何が効いているのか分からない」という状態になります。
EC改善は、施策の品評会ではありません。
大切なのは、今の課題に対して、最も効く一手から打つことです。
そのためには、まず自社のECサイトがどのフェーズにいるのかを見極める必要があります。
フェーズ別に見る、EC改善の優先順位

1. そもそも人が来ていないなら、まず集客
サイトへの訪問数が少ない段階で、CVR改善ばかりに時間をかけても効果は限定的です。
もちろん導線や商品ページの整備は必要ですが、そもそも見に来る人が少なければ、検証できる母数も足りません。
このフェーズで優先すべきは、まず集客です。
SEOで中長期的な流入を育てる。
リスティング広告やSNS広告で短期的な接点をつくる。
商品やブランドを知ってもらう入口を増やす。
ECサイトを作っただけでは、お客様は自動的には来ません。
インターネットは広いです。広すぎます。店を出しただけで人が集まるなら、全員いまごろ大繁盛です。
まずは、来てもらう理由と導線をつくること。
ここを飛ばして細かな改善に走ると、順番が逆になります。
2. 人は来ているのに買われないなら、導線と商品ページを疑う
アクセスはある。
でも購入につながらない。
この場合は、集客を増やす前に、サイト内の体験を見直す必要があります。
商品情報は十分か。
価格や送料は分かりやすいか。
購入までの流れで迷う箇所はないか。
スマートフォンで見たときにストレスはないか。
決済方法は適切か。
カゴ落ちが多い理由はどこにあるのか。
ユーザーは、少しの不安や違和感で離脱します。
「あとで見よう」は、だいたい二度と戻ってきません。ECにおける“あとで”は、かなり信用ならない言葉です。
このフェーズで重要なのは、ユーザーが「買いたい」と思った気持ちを途中で失速させないことです。
商品ページの情報充実、購入導線の整理、カゴ落ち対策、決済まわりの安心感、スマホ表示の最適化。
ひとつひとつは地味ですが、CVR改善はこの地味な詰めの積み重ねです。
派手な施策より、まずは買いにくさをなくす。
ここを丁寧に見ていく必要があります。
3. 新規購入ばかりなら、リピートとLTVを見る
新規顧客は獲得できている。
でも、継続購入につながらない。
この状態でさらに広告費を増やし続けると、売上は伸びているように見えても、利益が残りにくくなります。
一般的に、新規顧客の獲得は既存顧客との関係維持よりもコストがかかりやすいと言われています。だからこそ、ある程度購入が発生しているECでは、リピート施策が重要になります。
ここで見るべきは、CRMとLTVです。
購入後のメール配信。
LINEを活用した再来訪の促進。
ステップ配信による使い方や関連商品の提案。
ロイヤルティプログラム。
顧客ごとの購買履歴に応じたレコメンド。
一度買ってくれたお客様に、次も自然に選んでもらう。
この流れをつくれるかどうかで、ECの安定感は大きく変わります。
ECは、初回購入で終わりではありません。
むしろ、そこから関係が始まります。
4. 売上は伸びているのに現場が苦しいなら、運用を疑う
売上が上がってきた。
受注も増えてきた。
でも、現場が回らない。
これは成長しているECでよく起きる壁です。
受注処理を手作業で行っている。
在庫管理が複数システムに分散している。
顧客情報がバラバラに管理されている。
基幹システムとECが連携していない。
CSVの出し入れで日々を乗り切っている。
この状態が続くと、売上が伸びるほど現場が苦しくなります。
本来うれしいはずの受注増が、だんだん恐怖イベントになってくる。これは健全ではありません。
このフェーズで必要になるのが、API連携や基幹システム連携による業務の自動化です。
受注、在庫、顧客データ、出荷、会計。
これらをどこまでつなげるかによって、EC事業の伸びしろは変わります。
ECサイトは、表側のデザインだけで成り立っているわけではありません。
裏側の運用まで含めて設計しないと、一定規模を超えたところで必ず詰まります。
自社のフェーズを見極める3つの問い
では、自社がどのフェーズにいるのか。
まずは、次の3つを確認してみてください。
1. 月間のサイト訪問数は十分か?
そもそも訪問数が少ないなら、優先すべきは集客です。
SEO、広告、SNS、外部メディアなど、まずは接点を増やす必要があります。
2. 訪問者のうち、どれくらいが購入しているか?
アクセスはあるのに購入率が低いなら、導線や商品ページ、決済まわりに課題がある可能性があります。
CVRが自社の過去データや、同じ商材・価格帯・流入経路の目安と比べて低下している場合は、サイト内体験の見直しが必要です。
3. リピート購入率はどれくらいか?
初回購入で終わっているなら、CRMやロイヤルティ施策を検討するタイミングです。
新規獲得だけに頼り続けるECは、どうしても広告費の影響を受けやすくなります。
この3つを見るだけでも、やるべきことはかなり絞れます。
逆に言えば、この確認をしないまま施策を増やすのは危険です。
数字を見ずに「何となく良さそう」で施策を選ぶと、施策だけが増えて論点がぼやけていきます。
しかも、そういうときほど「もっと何かやらなければ」と新しい施策を探し始める。EC改善あるあるです。
EC改善は、施策の数ではなく順番で決まる
ECサイトは、たしかに”売る場所”です。
でも、売れるECサイトは、売る前の時間も設計しています。
比較する。
検討する。
問い合わせる。
納得する。
購入する。
もう一度買う。
この一連の流れに対して、どこでユーザーが止まっているのか。
そこを見極めずに施策を足しても、成果にはつながりにくい。
EC改善で大切なのは、量ではなく順番です。
今のフェーズに合った一手を、正しく選ぶこと。
そして、やると決めた施策を中途半端にしないこと。
「何から手をつければいいか分からない」
そう感じているなら、まずは自社のECサイトが今どの役割を果たすべきなのかを整理してみてください。
EC改善の話は、どうしても「この施策をやりましょう」という結論になりがちです。
でも実際には、施策そのものよりも先に考えるべきことがあります。
今のECサイトは、何がボトルネックなのか。
人が来ていないのか。買われないのか。戻ってきてもらえていないのか。運用が限界なのか。
そこを見誤ると、正しい施策でも成果は出ません。
だからまずは、自社のECサイトがどの段階にいるのかを整理してみてください。
意外と、「やるべきこと」より「今はやらなくていいこと」が見えてくるはずです。
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