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2026.04.10

福岡ポテトサラダ465浦川Q&A vol.2【追求編】

福岡ポテトサラダ465浦川Q&A vol.2【追求編】

前回、福岡ポテトサラダ465がなぜ生まれたのか、その背景や構造について触れてきました。
単なる飲食ではなく、時間や機会の格差に対して、循環というカタチでアプローチしている事業であることは、なんとなく見えてきたと思います。

とはいえ、もう一段踏み込むと、まだ引っかかる部分もある。
「結局、何をつくるつもりなのか?」
「それは本当に“クリエイティブ”と呼べるのか?」

 飲食でありながら、クリエイティブを語る。その距離感に、少し違和感があるのも事実です。

でも、話を聞いていくと、その違和感の正体が少しずつほどけていく。今回の事業は、単に“こだわっています”で終わるものではなく、どんな価値を設計し、それをどう成立させているのかという話でした。

福岡ポテトサラダ465は、何をつくっているのか。
どこまでをクリエイティブと捉えているのか。
そして、その価値はどのように成立しているのか。

第2回は、その中身に踏み込んでいきます。

1. 商品ではなく“クリエイティブ”として捉えるとはどういうことですか?

ポテトサラダという「商品」を作っているんですけど、作っているという意識ではありません。
あくまでも商品は入口で、その先にある体験や関係性まで含めて設計している。

誰が関わるのか、どんな空気が流れるのか、どんな会話が生まれるのか。
食べたあとに、どんな感情や余韻が残るのか。
そして、その体験が次の行動や関係性にどうつながるのか。

これらすべてを含めて、一つのアウトプットとして捉えています。

つまり、提供しているのはポテトサラダではなく、人や状態に変化を起こすための一連の設計です。この視点に立つと飲食は単なる業態ではなく、社会の中で機能するクリエイティブの一形態になる。
だから私たちは、この事業を商品ではなくクリエイティブとして扱っています。


2. クリエイティブはどこからどこまで含まれますか?

 一般的に言われるデザインや商品開発だけではありません。

素材選び、製法、価格設定、提供方法、空間設計、接客の距離感。
さらに、学生の働き方、業務内容、企業との接点設計、キャリアへの接続まで含まれる。

つまり、目に見える部分だけでなく、裏側の構造すべてがクリエイティブの対象です。

たとえば、時給2000円という設定もそう。これは単なる条件ではなく、「時間を取り戻す」という設計思想のアウトプットです。

こういう一つ一つの判断が連動して全体の価値が成立している。部分最適ではなく、全体設計。

このスケールで捉えないと、今回の事業の本質は見えないと思っています。


3. Webやアートをやってきた会社だから出る違いは何ですか?

一番大きいのは、目に見えないものを扱う前提があることです。

多くの飲食は、味や見た目、サービスといった「分かりやすい価値」を中心に設計されます。それは当然必要ですが、そのレイヤーだけで勝負すると、どうしても同質化しやすい。結果として、差は出ても持続しにくい。

私たちはこれまで、WEBやアートの領域で、空気感や納得感、違和感や関係性といった、言語化しにくい価値を扱ってきました。
「なぜそう感じるのか」「どこでズレているのか」を構造として捉え、そこに手を入れていく。そういう仕事をしてきた。

その前提があるので、今回も「何を提供するか」より先に、「どういう状態をつくるか」から設計しています。
味や見た目はその結果であって、起点ではない。

さらに、裏側の構造──学生の関わり方やキャリアへの接続、空間とアートの関係性まで含めて一体で設計している点も特徴です。

つまり、見えるものではなく、見えない部分の設計精度がそのままブランドの質になる。ここが、これまでの経験がそのまま効いている部分だと思っています。


4. このブランドの価値は何でしょうか?

このブランドの価値は、「安心」「納得」「循環」の三層で成立しています。

まず一つ目は安心。無農薬野菜、無添加、手づくりという前提で、身体に負担をかけない食を提供する。これは最低限の条件です。
二つ目は納得。なぜこの素材なのか、なぜこの製法なのか、どういう思想で成り立っているのか。それを説明できる状態にしておくことで、「なんとなくいい」ではなく「理由があっていい」と感じられる。
三つ目が循環。お客様が支払った対価が、学生の高時給やキャリア形成に還元され、その先で社会につながっていく。この構造自体が価値になっている。

つまり、単に美味しいだけではなく、食としての安心、思想としての納得、社会的な意味としての循環が一体になっている状態
この三層が重なって初めて、このブランドの価値は成立しています。


5. 味以外に何の掛け合わせで成立しますか?

味はあくまで前提でしかありません。
その上に複数の要素が重なり合うことで、このブランドは成立しています。

具体的には、

  • 無農薬、無添加による安心安全な素材
  • 手づくりというプロセスに内在する納得感
  • 学生支援という社会的な構造
  • ichirinのギャラリーによる情緒的な変化
  • その場で生まれる人と人の関係性

これらが分断されず、一つの体験として成立していることが重要です。どれか一つが突出しても意味はなく、全体として機能して初めて価値になる。

つまり、『味×体験×構造×意味が同時に成立している状態』です。

この複合性こそが、このブランドの差別化であり、一般的な飲食店では再現しにくい領域です。


6. どのような訴求を考えていますか?

基本的には丁寧な説明を基にして『色々な解釈が生まれること』を意識しています。

すべてを言葉で伝えようとすると、どうしても薄くなる。理念や社会課題を前面に出しすぎると、押しつけにもなりやすい。それは避けたい。

まずは、来て、食べて、空間に触れる。その中で「なんかいいな」という感覚が自然に生まれる状態をつくる。
その感覚の裏側に思想や構造がある。

 体験と言語が先でも後でもいい。必ず後になったどちらかが、もう片方を追いかけてくるという設計です。

ただし、裏側の設計や思想は徹底的に詰めています。
必要な人にはきちんと説明できる状態にしておく。

この「感じさせる」と「説明できる」の両立を意識しています。


7. このブランドの健康観とは何ですか?

一般的な“ヘルシー”という言葉では捉えていません。

カロリーや栄養バランスだけでなく、食べたあとの状態まで含めて健康だと考えています。

無農薬野菜、無添加、手づくり。
これによって身体への負担を減らすのは大前提です。その上で、食べる時間そのものがどういうものだったか。
安心して食べられたか、心地よい時間だったか。

さらに、その裏側にある構造に納得できるかどうか。
身体・感情・認識が分断されていない状態。

これらが揃ったとき、初めて「健康」と言える。

このブランドにおける健康は身体だけでなく、時間や関係性まで含めた状態の質を指しています。


8. 素材選びで譲れなかった条件は何でしょうか?

一貫しているのは、不要なものを入れないことです。

無農薬や無添加というのは入口であって、本質は「余計なことをしない」という姿勢です。
素材そのものが持っている力を信じる。それを加工の過程で損なわない。

そのためには、どうしても手間とコストがかかる。効率を優先すれば、いくらでも調整はできますが、それをやった瞬間にこのブランドの意味は崩れる。

だから、ここは最初から条件として固定しました。

つまり、効率や利益のために素材の質を落とさないこと
この一点は、どんな状況でもブレさせない前提です。


9. 無農薬・無添加の思想はどのように捉えていますか?

これは単なる健康志向ではありません。
関係性の問題として捉えています。

どこで作られたのか。
どういう環境で育ったのか。
誰がどんな意図で関わっているのか。

その流れを含めて、自分が口にするものに納得できるかどうか。
ここが重要です。
その前提にあるのは「どんな関係性の中で生まれたものか」という問いです。

この問いに対して責任を持つこと。
それがこのブランドの素材思想です。


10. 製法で効率より優先したものは何ですか?

一貫して優先しているのは、納得できるプロセスかどうかです。

効率を上げれば、量も作れるしコストも下がる。でも、その過程がブラックボックス化してしまうと何をどう作っているのかが見えなくなる。

それは、このブランドの思想と相反します。

誰が、どの工程で、何をしているのか。
プロセスに透明性を持たせ、それを説明できる状態にしておくこと。

手間はかかりますが、その積み重ねが信頼になる。
結果として効率ではなく、納得できる作り方を優先する判断をしています。


11. 手づくりの本質とは何でしょうか?

手づくりとは、単に機械を使わないことではありません。

本質は、プロセスに意思が介在しているかどうかです。

なぜこの素材を使うのか。
なぜこの工程で処理するのか。
なぜこの形で提供するのか。

その一つ一つに理由があり、選択が何層にも積み重なっている状態。
それが手づくりです。

逆に言えば、すべてが自動化され判断が排除された状態では例え人の手が関わっていても、それは手づくりとは言えない。

このブランドにおける手づくりは、人が介在することでしか生まれない温度感と、人の意思が残り続けているプロセスそのものを指しています。


12. 本質を正しく届けるために意識していることはありますか?

意識しているのは、削ぎ落とすことと、歪ませないことです。

価値を伝えようとすると、どうしても装飾や演出を足したくなる。
過剰に 「分かりやすくしよう」「良く見せよう」とすると、余計な要素が増えていく。
その結果、本来の意味や強度がぼやけてしまう。

それを避けるために、まずは徹底的に削る。何が本質なのかを見極め、それ以外をできるだけ排除する。ただし、削るだけでは成立しないので、残した部分の精度は徹底的に上げる。

シンプルに見えるが、裏側は高密度に設計されている状態をつくる。

さらに、伝え方のコントロールも必要。丁寧な説明の中に体験することで自然に伝わる余白を残す。
その上で、必要な人には色々な角度を言語化して届けられる状態にしておく。

この「削る」「残す」「伝える」のバランスを崩さないこと。それが本質を歪めずに届けるための前提だと考えています。


13. 「福岡ポテトサラダ465」という屋号と、“465”の意味は何でしょうか?

「福岡ポテトサラダ」の部分は、文字通りです。ただ、ここでWEBを生業とする私たちの強みが出ます。

認知されたら検索される。何かでこのお店の情報を目にした時、何となく記憶に残っている方々も含めて検索するのは「福岡 ポテサラ」「福岡 ポテトサラダ」など。

だから、こういう方々に情報が届きやすいように屋号の前半は基本通りの構造にして、 何をやっているのかが一目で分かることを優先しました。
余計な比喩や抽象表現を入れず、まずは入口を広くする。これはこのブランド全体の設計思想とも一致しています。

その上で「465」という数字を加えています。これは、日本の伝統色の色数に由来していて、発想が先行したのはこちら。

日本には、四季や自然、文化の中で培われてきた多様な色があり、それらは単なる色ではなく、背景や意味、時間の積み重ねを含んだものとして存在しています。
同じ赤でも、微妙に異なる。同じ青でも、文脈によってまったく違う表情を持つ。

つまり、一つのカテゴリの中に、無数のニュアンスが存在している状態です。

ポテトサラダも、それに近いと考えています。
誰もが知っている料理でありながら、家庭や地域、作り手によってまったく違う。味も、質感も、意味も、それぞれに異なる。

だからこそ「ポテトサラダ」という単語だけでは表現しきれない幅を、数字で補完したかった。

さらに言えば、この事業自体も同じ構造を持っています。
食というシンプルな入口の中に、雇用、学び、キャリア、関係性、空気感といった複数の要素が折り重なっている。一見すると単純ですが、実際には多層的。その状態を象徴するものとして「465」を置いています。

また、意味を一つに固定しないことも意識しています。数字にすることで、受け手ごとに解釈の余地が生まれる。その余白が、関係の入り口になる。

つまり、分かりやすさと奥行き、固定と余白、その両方を成立させるための設計が、この名前です。


14. 「売れる」と「残したい」をどう一致させるのですか?

最初から分けていません。

「売れるもの」と「残したいもの」を別軸で考えると、どこかでズレが生まれる。
短期的な売上を優先すれば思想は削られる。思想を優先すれば売れなくなる。

この構造自体を回避する必要がある。

だから、残したいものが、そのまま価値として成立する設計にすることを前提にしています。

素材、製法、価格、体験、構造。すべてを一貫させることで、思想がそのままビジネスになる状態をつくる。

ここがズレない限り、売れることと残すことは矛盾しません。


ここまでで、福岡ポテトサラダ465がどのような思想と設計のもとに成り立っているのかは、ある程度見えてきました。ただ、話を聞けば聞くほど、この事業は“今のカタチ”で完結するものではないことも分かってきます。

ポテトサラダという入口の先にどんな変化を起こそうとしているのか。
この取り組みはどこまで拡張されていくのか。

背景を知るほど、この事業はポテトサラダだけの話では終わらなさそうです。次回はこの思想がどこまで広がり、何を創り出そうとしているのかを追いかけます。

福岡ポテトサラダ465

この記事の著者

浦川 航平

浦川 航平 URAKAWA Kohei

株式会社 もずくとおはぎ 代表取締役 CEO

長崎県佐世保市出身。 経営者と芸術家。ふたつの顔を持つ男。

家具・プロダクトデザイナーから通販会社のダイレクトマーケッターを経て2012年にウェブ業界へ足を踏み入れ、2023年3月に独立。経営者の道へ。

「右脳」と「左脳」を自由に行き来する独自のスタイルで、戦略的なプロデュースと緻密なマネジメント、そして人の懐にスッと入る柔軟な人柄を武器に、数々のクライアントの本質的課題に切り込み、解決へと導いてきた。

2025年6月、「GMOクラウドEC」エバンジェリストに就任。
GMOメイクショップ株式会社との連携を通じて、EC領域のさらなる可能性を追求している。

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