送料無料じゃなくても選ばれるECへ|「届くまで」を設計できていますか?
ECで買い物をして、注文完了メールは届いた。そこから3日、音沙汰なし。
発送されたのか。まだ倉庫にいるのか。もしかして注文ごと忘れられているのか。マイページを開いても「処理中」のまま。
お客様の頭の中では、不安が動き始めます。
送料が無料だったとしても、これはあまりうれしくない配送体験です。
ECでは「送料無料にしないと売れないのでは」という話がよく出ます。たしかに送料無料の4文字は強い。
ただ、送料を0円と表示しても、配送コストそのものが消えるわけではありません。
企業が負担するか、商品価格に含めるか、一定金額以上の購入で吸収するか。どこかへ移動しているだけです。
競合に合わせて送料無料ラインを下げ続ければ、売れているのに利益が残らない、少し不思議な繁盛店ができあがります。
送料無料を否定したいわけではありません。大切なのは、「無料だから選ばれる」以外の理由も持っておくことです。
お客様が欲しいのは、速さだけなのだろうか?
注文した翌日には商品が手元に届く。お客様にとって、これは嬉しい出来事のひとつです。
しかし配送についてお客様が求めていることは、他にもあるのではないでしょうか。
いつ発送されるのか。いつ届くのか。時間は選べるのか。今、荷物はどこにあるのか。遅れたら連絡は来るのか。
つまり、求められているのは速さだけではなく、予定を立てられることです。

発送まで5日かかっても、最初から分かっていれば待てます。反対に、「通常3〜7営業日以内に発送」とだけ書かれ、その後は沈黙。
こうなると3日目あたりから、注文履歴を何度も見に行くことになります。
ECサイトへの再訪ではありますが、アクセス解析で喜ぶ種類の再訪ではありません。
注文受付、出荷準備、発送完了、配達予定、遅延のお知らせ。こうした途中経過が見える状態を、私は「読める配送」と考えています。
初めての購入では、商品や価格を比べます。2回目には、そこへ「前回、ちゃんと届いた」という記憶も加わります。
配送は購入後の話に見えて、実は次回購入前の話でもあるのです。
配送方法を増やす前に、誰の不便を解くか
配送方法は、多ければ多いほど親切というものでもありません。選択肢を増やしすぎると、運用する側が混乱し、ミスという新しい選択肢まで増えてしまいます。
冷凍食品なら、受け取れる日時を選べることが重要です。ギフトなら、指定日に届くことや、送り主が配送状況を確認できることが安心につながります。BtoB ECなら、複数拠点への配送や納品日の指定が、発注担当者の手間を減らします。
同じ「配送」でも、求められる便利さは違います。
ここで先にシステムから考えると、「置き配に対応できる」「コンビニ受け取りも追加できる」と、機能の話がどんどん増えていきます。
しかし、できることと、必要なことは別です。
まず考えたいのは、「この商品を買う人は、受け取り時にどんなことで困るのか」。
その答えが決まってから、必要な配送方法や通知を選ぶ。この順番なら、使われない機能を並べずに済みます。
日時指定のボタンだけでは、日時指定はできない
ECサイトに日時指定の項目を設置すれば、それで配送体験が完成するわけではありません。

お客様が選んだ日時は、受注情報として処理され、倉庫へ届き、配送の現場まで渡る必要があります。画面ではきちんと指定できたのに、途中で情報が抜けていたら、お客様の希望だけが置いていかれます。
在庫も同じです。ECサイトでは在庫あり、倉庫では在庫なし。注文後に欠品が判明してから、担当者が慌ててメールを書く。画面がどれだけきれいでも、裏側がつながっていなければ、体験はそこで止まります。
配送の話は、送料と配送会社だけで解決するように見えます。しかし実際には、商品情報、在庫、受注、倉庫、通知、問い合わせ対応まで関係します。
だから、すぐに機能を選ぶのではなく、最初に流れを描く必要があります。
お客様は何を指定するのか。ECサイトは何を受け付けるのか。どの情報を倉庫へ渡し、何をお客様へ返すのか。
トラブルが起きたら、誰がどこまで確認できるのか。
この整理を飛ばすと、機能はあるのに使いにくい、あるいは現場だけが頑張って帳尻を合わせるECになります。
配送体験の改善とは、便利なボタンを増やすことではありません。
お客様の希望と裏側の業務を、途中で迷子にせずつなぐことです。
送料無料ラインを下げる前に、自社で一度買ってみる
配送改善の最初の一手は、大がかりなシステム改修ではありません。
自社のECサイトで、実際に商品を一つ買ってみてください。
購入前に到着予定は分かるか。注文後、どんなメールが届くか。発送まで何も分からない時間はないか。配送状況を確認できるか。日時を変更したくなったら、どこから手続きすればよいか。
あわせて、配送に関する問い合わせも見返してみてください。「いつ発送されますか」が多いなら、お客様から見えない時間がどこかに残っています。
できれば、いつもと違う住所や、少し扱いの難しい商品でも試してみる。順調な注文だけを見ていると、ECはだいたい優等生です。
条件を少し変えたときに、本当の性格が出ます。
送料無料を続けるか、条件を変えるか。それは商品単価や利益構造によって判断すればよいと思います。
送料無料ラインをもう1,000円下げる前に、届くまでの時間を、お客様の目線で読み直す。
そこで見つかった不安を解消するほうが、送料無料の表示より長く選ばれる理由になるかもしれません。
※関連リンク:「GMOクラウドEC」公式サイト



