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2026.06.18

オムニチャネルって本当に必要?業種で変わるEC戦略の考え方

オムニチャネルって本当に必要?業種で変わるEC戦略の考え方

「とりあえずオムニチャネル」で、本当に前に進むのか

「店舗もECもSNSもアプリも、全部つなげたほうがいいですよね?」

ECの相談を受けていると、こういう話がよく出てきます。
たしかに、オムニチャネルという言葉には、なんだか未来っぽい響きがあります。

店舗とECがつながる。
SNSから購入につながる。
アプリで顧客情報を見られる。
在庫もポイントも一元管理できる。

うん、聞いているだけなら完璧です。
ビジネス界の全部入り幕の内弁当みたいな感じです。

ただし、ここで一度立ち止まりたいんです。

本当に、全部つなぐ必要がありますか?

オムニチャネルは強力な考え方です。
でも、どんな業種にも、どんな商材にも、同じように当てはまるわけではありません。

大事なのは、チャネルを増やすことではありません。
店舗、EC、SNS、アプリをきれいに並べることでもありません。

見るべきは、もっと手前です。

お客様は、どうやって知り、どう迷い、どう買っているのか。

ここを見ずに「とりあえずオムニチャネル」と言い出すと、だいたいシステムだけ立派になります。
そして現場は、なぜか忙しくなる。
これはもう、ECあるあるのひとつです。

今回は、オムニチャネルが向いている業種、優先度がそこまで高くない業種を整理しながら、自社に合ったEC戦略の考え方を見ていきます。

まず整理。オムニチャネルとマルチチャネルは何が違うのか

まずは言葉の整理からいきましょう。

似た言葉が多いので、ここで混乱したまま進むと、後半で頭の中がケーブル配線みたいになります。
一本ずつほどきます。

マルチチャネルとは、複数の販売経路を持っている状態です。

たとえば、店舗がある。
ECサイトもある。
Instagramでも発信している。
楽天やAmazonにも出店している。

このように、お客様との接点が複数ある状態ですね。

ただし、マルチチャネルの場合、それぞれのチャネルが独立していることも多いです。

たとえば、

  • 店舗のポイントとECのポイントが別
  • ECの購入履歴を店舗スタッフが見られない
  • 店舗在庫とEC在庫が連動していない
  • SNSで見た商品にECでたどり着きにくい

こうなると、お客様から見ると少し残念です。

「さっき見たあの商品、どこにあるの?」
「店舗にはあるの?ECにはあるの?」
「会員登録したのに、また最初から説明するの?」

こういう小さな引っかかりが、購買意欲をじわっと削っていきます。
便利にしたつもりが、お客様には「また最初から?」と感じられてしまう。ここがもったいないところです。

一方、オムニチャネルは、それぞれのチャネルを裏側でつなぎ、お客様に一貫した購買体験を提供する考え方です。

たとえば、

ECで商品を見つける。
店舗在庫を確認する。
店舗で試す。
アプリで会員情報を提示する。
購入後は自宅に配送される。
次回はECでスムーズに再購入できる。

このように、チャネルをまたいでも体験が切れない状態です。

ただし、ここで大事なのは、
オムニチャネルが常に正解とは限らないということです。

「つながっていること」自体に価値があるのではありません。
お客様の購買行動に合っているから、つなぐ価値が生まれるのです。

オムニチャネルと相性がいいのは、「買う前に迷う」商材

オムニチャネルが力を発揮しやすいのは、購買前に複数の接点をまたぐ商材です。

もっとわかりやすく言うと、
お客様が買う前に、見る・触る・比べる・相談する商材です。

こうした商材は、ECだけで完結しないことが多くあります。
逆に、店舗だけでも完結しません。

SNSで見て気になる。
ECで詳細を見る。
店舗で実物を確認する。
家に帰ってもう一度考える。
数日後にECで買う。

お客様の行動は、こちらが思うより自由です。
こちらの都合よく、一直線には進んでくれません。
きれいに舗装された一本道ではなく、寄り道あり、戻り道あり、急に立ち止まることもあります。

だからこそ、接点同士をつなぐ意味が出てきます。

アパレル・コスメ

アパレルやコスメは、オムニチャネルと相性がいい業種です。

服はサイズ感や素材感があります。
コスメは色味や質感、肌との相性があります。

ECの商品写真や説明文だけでは、最後の一押しが足りないこともあります。
そこで店舗の出番です。

SNSで商品を知る。
ECで在庫やレビューを見る。
店舗で試着する。
気に入ったらその場で買う。
サイズ違いはあとでECから注文する。

この流れはとても自然です。

さらに、店舗スタッフがECの購入履歴を把握できれば、接客の質も変わります。

「前回このシリーズを買われていますね」
「この色味がお好きなら、こちらも合いそうです」
「ECで見ていた商品、店舗に在庫ありますよ」

こうなると、お客様にとっては、ただ商品をすすめられるのではなく、
「自分の好みをわかったうえで提案してくれている」と感じやすくなります。

もちろん、やりすぎると怖いです。
“把握しています感”が強すぎると、接客ではなく軽い捜査になります。
ここは距離感が大事です。

家具・インテリア

家具やインテリアも、オムニチャネルとの相性がいい領域です。

理由はシンプルです。
単価が高く、検討期間が長いからです。

ソファを買う。
テーブルを買う。
ベッドを買う。

このあたりは、思いつきで「ポチッ」とはいきにくいですよね。
部屋に入るか。
色は合うか。
座り心地はどうか。
搬入できるか。
家族の意見はどうか。

検討することが多いです。
もはや軽いプロジェクトです。

お客様は、Instagramで暮らしのイメージを見て、ECでサイズや仕様を確認し、ショールームで実物を確かめ、最終的にECで注文することもあります。

このとき、各接点の情報がバラバラだと、検討が途切れてしまいます。

「ECで見た商品名がわからない」
「店舗で聞いた内容を、家に帰ったら忘れた」
「在庫や納期がどこを見ても違う」

こういう状態になると、お客様の熱量は下がります。

家具・インテリアの場合、チャネルをつなぐことは、単に便利にするためではありません。
検討の温度を落とさず、購入まで進みやすくするために必要なのです。

ギフト

ギフト商材も、オムニチャネルの考え方が活きやすい領域です。

ギフトは、購買のきっかけがイベントに紐づきます。

誕生日。
母の日。
父の日。
お中元。
お歳暮。
結婚祝い。
出産祝い。

一度購入したお客様に対して、次のタイミングで自然に提案できれば、再購入のきっかけをつくりやすくなります。

たとえば、昨年母の日に購入したお客様に、今年の母の日ギフトを案内する。
以前、出産祝い向けの商品を購入したお客様に、次のギフトシーンに合わせた商品を提案する。

こうしたアプローチは、購買データが活きる場面です。

ただし、ギフトは気持ちの買い物でもあります。
単に「去年買ったから今年もどうぞ」では少し味気ない。

お客様が誰かを思い浮かべて選ぶ時間を、ちゃんと支えること。
そのために、チャネルやデータを使う。

ここを間違えなければ、オムニチャネルはかなり有効です。

逆に、先にやるべきことが別にある業種もある

ここからが大事です。

オムニチャネルは便利です。
考え方としても魅力があります。

でも、すべての業種で最優先とは限りません。

なかには、チャネル統合よりも先に、
再注文のしやすさ
発注業務の負担軽減
購入までの迷いの少なさ
を整えたほうが成果につながりやすい業種もあります。

ここを見誤ると、立派な仕組みを作ったのに、お客様が求めている場所と違うところを磨いてしまいます。

たとえるなら、靴ひもがほどけているのに、帽子の角度を直しているようなものです。
見た目は整うかもしれませんが、走り出すとたぶん転びます。

消耗品・日用品

シャンプー、洗剤、サプリメント、食品、ペット用品など、繰り返し買うことが前提の商材があります。

この場合、お客様が求めているのは、必ずしも「いろいろな接点を行き来する体験」ではありません。

むしろ求めているのは、
なくなる前に、迷わず、手間なく買えることです。

いつもの商品をまた買いたい。
前回と同じものを注文したい。
毎月決まったタイミングで届けてほしい。
数量だけ変えて再注文したい。

こうしたニーズが強い商材では、オムニチャネル化よりも、EC内のリピート導線を整えるほうが先です。

たとえば、

  • 定期購入
  • 購入履歴からのかんたん再注文
  • お届け周期の変更
  • 休止・スキップのしやすさ
  • メールやLINEでのリマインド

このあたりの整備が、LTV向上につながりやすくなります。

お客様からすると、毎回じっくり検討したいわけではありません。
むしろ「前と同じでいいから、すぐ買わせてほしい」という状態です。

ここで過剰に回遊させると、かえって邪魔になることもあります。
迷路みたいなECで日用品を買わされるのは、なかなかの修行です。

BtoB資材・指名買い商材

BtoB資材や、品番・型番で購入される商材も、オムニチャネルの優先度は慎重に考えるべきです。

なぜなら、この領域では、お客様の目的がかなり明確だからです。

「この部品を、いつもの数量で発注したい」
「この資材を、納期に間に合うように注文したい」
「承認フローに沿って、間違いなく発注したい」

ここで必要なのは、楽しい回遊体験ではありません。
業務が止まらないことです。

BtoBの場合、購買担当者は買い物を楽しみに来ているわけではありません。
もちろん、使いやすいに越したことはありませんが、目的は業務の遂行です。

だからこそ重要なのは、

  • 取引先ごとの価格表示
  • 見積書・請求書・領収書の発行
  • 承認フロー
  • 購入履歴からの再発注
  • 基幹システムとの連携
  • 在庫・納期情報の正確な表示
  • CSV注文やAPI連携

こうした機能です。

BtoB資材のECで、お客様が求めているのは「気づいたら別の商品も欲しくなる体験」より、
欲しいものに最短でたどり着き、正確に発注できる体験です。

ここを間違えると、見た目は立派でも、現場では使われないECになります。
せっかく作ったのに使われない。

自社に必要かどうかは、2つの問いで見えてくる

では、自社にオムニチャネルが必要かどうか。
どう判断すればよいのでしょうか。

難しく考えすぎる必要はありません。
まずは、次の2つの問いで整理できます。

① お客様は「買う前」に複数の接点をまたいでいるか

まず確認したいのは、購買前の行動です。

お客様は、商品を知ってから購入するまでに、複数の接点をまたいでいるでしょうか。

たとえば、

SNSで見つける。
ECで調べる。
店舗で試す。
レビューを見る。
スタッフに相談する。
再度ECに戻って購入する。

このような行動が多いなら、チャネル間の連携に投資する価値があります。

逆に、商品名や型番で検索され、すぐ購入される商材であれば、無理に回遊設計を厚くするより、検索性や再注文性を高めたほうがよい場合もあります。

つまり、見るべきは「チャネルの数」ではありません。
お客様の行動が、チャネルをまたいでいるかどうかです。

ここを見ずに仕組みだけ増やすと、ECの裏側がどんどん複雑になります。
複雑なだけの仕組みは、だいたい現場の顔を曇らせます。

② 「また来てほしい」のか、「また買ってほしい」のか

もうひとつの問いはこれです。

自社の商材は、
また来てほしい商材なのか。
それとも、
また買ってほしい商材なのか。

この違いはかなり重要です。

アパレル、コスメ、家具、ギフトのように、見る・選ぶ・比べる体験自体に価値がある商材は、「また来てほしい」要素が強くなります。

この場合は、店舗、EC、SNS、アプリなどをつなぎ、お客様との関係を深める設計が向いています。

一方、消耗品やBtoB資材のように、同じものを繰り返し購入する商材は、「また買ってほしい」要素が強くなります。

この場合は、体験を広げるより、購入を簡単にすることが大切です。

つまり、

体験価値が大きい商材は、チャネル連携。
再購入性が高い商材は、購入導線と業務効率。

この切り分けができるだけで、EC戦略はかなり整理しやすくなります。

EC戦略は、お客様の買い方から逆算する

オムニチャネルは、確かに強力な戦略です。

店舗、EC、SNS、アプリ、会員情報、在庫情報、購買データ。
これらがきちんとつながれば、お客様にとって便利で心地よい体験をつくることができます。

ただし、それはあくまで手段です。

目的は、オムニチャネルを導入することではありません。
お客様の買い方に合った仕組みをつくることです。

アパレルや家具のように、検討の途中で複数の接点を行き来する商材なら、チャネルをつなぐ意味は大きいです。

一方で、消耗品やBtoB資材のように、すばやく、正確に、繰り返し購入される商材なら、まず磨くべきは再注文や発注のしやすさです。

「うちもオムニチャネルをやるべきか?」と考える前に、まず見るべきはここです。

お客様は、どこで迷っているのか。
どこで止まっているのか。
どこがラクになれば、もう一度買いやすくなるのか。

ここが見えてくると、必要なEC戦略も自然と見えてきます。

全部つなぐことが正解ではありません。
必要なところを、ちゃんとつなぐことが大事です。

GMOクラウドECは、BtoBサイトや中〜大規模EC、システム連携を前提とした構築にも対応しやすい選択肢です。
オムニチャネルが必要な場合も、まずはリピート導線を整えるべき場合も、商材の買われ方から逆算して考えられます。

ECは、流行語で作るものではありません。
お客様の行動を見て、事業に合う形で設計するものです。

ここを間違えなければ、ECはただの販売チャネルではなく、事業を前に進める仕組みになります。

※関連リンク:「GMOクラウドEC」公式サイト

この記事の著者

浦川 航平

浦川 航平 URAKAWA Kohei

株式会社 もずくとおはぎ 代表取締役 CEO

長崎県佐世保市出身。 経営者と芸術家。ふたつの顔を持つ男。

家具・プロダクトデザイナーから通販会社のダイレクトマーケッターを経て2012年にウェブ業界へ足を踏み入れ、2023年3月に独立。経営者の道へ。

「右脳」と「左脳」を自由に行き来する独自のスタイルで、戦略的なプロデュースと緻密なマネジメント、そして人の懐にスッと入る柔軟な人柄を武器に、数々のクライアントの本質的課題に切り込み、解決へと導いてきた。

2025年6月、「GMOクラウドEC」エバンジェリストに就任。
GMOメイクショップ株式会社との連携を通じて、EC領域のさらなる可能性を追求している。

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